silky6の日記

こんにちは。このブログは、silky6が日々の生活で気になったことを気ままに書き連ねています。

無の魅力

Newspicksのアカデミア無料番組に、『世界は贈与で出来ている』の著者である哲学者の近内悠太さんと脳科学者の茂木健一郎さんが出演されていた。タイトル、特に贈与という単語と、茂木さんに惹かれ、放送開始時間に合わせてアプリを立ち上げた。茂木さんと近内さんは10年来の仲のようで、プライベートでの親交の深さが二人の会話から感じ取れた。

話の中で面白かったのは、贈与は、贈与提供者の意図に反し、贈与を受け取った者に対して健全な精神的負債を負わせる。例にあがったのが、昨今のトイレットペーパー不足の中、ドラッグストアでやっと手に入れた最後の1個のトイレットペーパーを、自分より順番が1つ遅かったがために買うことができなかった見ず知らずの人に、いくつか無償で提供した話。この時、トイレットペーパーを譲ってもらった人は、譲った人の意図にかかわらず、ただでもらっては申し訳ないから、お返しをしようとするのが人間として通常の反応であると。おかれた立場にもよるだろうけど、基本的に、洋の東西問わず、いやしくも人間ならそうするだろう。

面白いのが、恩返しする相手が、必ずしも自分に贈与した相手ではないということである。自分に優しくしてくれた先輩に恩返ししようにも音信不通状態。その場合、自分の後輩に親切にすることで恩返しを成し遂げるとか。親切は廻り巡って自分のところに戻ってくるという、あのパターンである。

世の中のヒット商品は、無料サービスを上手く活用していると思う。Googleの検索機能は無料で私たちに膨大な情報を与えてくれる。それに感謝するから、他人にGoogleを薦めることで、ある種健全な精神的負債を返済しようとする。もちろん、その背後で彼が狙っているデータを提供しているので、その時点で負債はチャラになっているのだが。。。俗にいうフリーミアムサービスは、この贈与のコンセプトを利活用しているわけだ。

茂木さんの話で印象に残ったのが、金融ビジネスで財を成したアメリカ人の家に招待され、書斎に谷崎潤一郎の本を発見して驚いたという話。金融ビジネスに全く関係ない分野の本を読むことは、一見無駄な行為に思えるが、ひょっとしたら何らかの形でビジネスの成功に寄与したのかもしれない。無料、無駄、そして我を忘れて何かに熱中できる無垢な気持ち。無って、大切なのだと思う。